Zcashのメジャーアップデート”Sapling”について、Sapling AddressesとTurnstile Migration

2018.10.09

BCHNews編集部

こんにちは、BCHNews編集部です。

匿名系暗号通貨のZcashは、2018年8月16日、v2.0.0をリリースしました。

このリリースは、ZcashにSaplingという機能が導入されるメジャーアップデートとして注目されていますが、アクティベートまで残すところあと僅かとなりました。

本記事では、今回のアップグレードで導入される「Sapling Addresses」と、Sapling Addressesへの移行方法として採用された「Turnstile Migration」について紹介したいと思います。

Zcashのアドレス

まず、Saplingについて理解するための前提として確認しておきたいことがあります。

暗号通貨を送金する場合、送金額と送金先のアドレスを指定してトランザクションを作成しますが、Zcashには、「z-address(shielded address)」と「t-address(transparent address)」という二種類のアドレスが存在します。

t-addressは、Bitcoinのアドレスと同じように動作する通常のアドレスであり、”t”から始まる文字列です。

一方、z-addressは、匿名性を確保するためのアドレスであり、”z”から始まります。

例えば、z-addressからz-addressアドレスへ送金した場合、誰から誰へ送金されたかが隠蔽されます(エクスプローラー)。また、z-addressからt-addressへ送金した場合、誰から送金したかが隠蔽されます(エクスプローラー)。反対に、t-addressからz-addressへ送金した場合は、誰へ送金したかが隠蔽されます(エクスプローラー)。もちろん、t-addressからt-addressへ送金することも可能です(エクスプローラー)。

また、送金先だけでなく送金額についても隠蔽されます。

しかし、現在のz-addressには大きな問題があります。z-addressを利用するとゼロ知識証明と呼ばれる仕組みを利用することになるのですが、その計算コストが非常に高くユーザビリティに難があります。

今回のZcash v2.0.0では、これを大きく改善するSapling Addressesが導入されることとなります。メインネットワーク上でSaplingがアクティベート(有効化)されるブロック高は419,200であり、2018年10月29日 08:18(UTC+09:00)頃にマイニングされると予想されています。

アップデート方法は、Zcashソフトウェアをバージョン2.0.0以降にすることです。バージョン2.0.0以降であれば、自動的にアップグレードされます。

このネットワークのアップグレードでは、ブロックチェーンが分裂し新しい通貨が作成される予定はありません。

Sapling Addresses

今回のアップグレードで導入されるSapling Addressesは、暗号化されたトランザクションのパフォーマンスと機能を向上させることによって、最終的にネットワーク全体のセキュリティを高めることができます。

現在Zcashでは、リリース時に導入された”zc”で始まるアドレスSprout z-addressがサポートされています。
Sprout z-addressでは、ゼロ知識証明を用いたトランザクションを作成するためにコンピュータメモリを約1.5GB消費し、時間が40秒も掛かります。
そのため、ほとんどのZcashトランザクションでは、Bitcoinと同じように機能するt-addressが使用されているのです。

しかし、Saplingで導入される新しい形式のアドレス、Sapling z-addressesでは、トランザクション作成にかかるコンピュータメモリは40MB、掛かる時間は数秒に短縮され、利便性が格段に向上します。

始まり 文字数 消費メモリ 消費時間
今までのアドレス Sprout z-address zc 95文字 1.5GB 40秒
Saplingからのアドレス Sapling z-address zs 78文字 40MB 数秒

 

Turnstile Migration

しばらくはSproutアドレスもサポートされる予定ですが、ユーザーがエコシステムのサポートを受けるためには、資金をSaplingアドレスに移行する必要があります。

Zcashは、Saplingアドレスへの移行を、Sapling turnstileと呼ばれるプロセスで実施するとこととしました。

Sapling turnstileは、Saplingアドレスへの移行することが目的ですが、加えて、Zcashの偽造に対する監査メカニズムとしての意味もあります。

Zcashの匿名性を実現するゼロ知識証明の仕組みは、開発者だけが知ることのできるパブリックパラメータと呼ばれる値を利用しています。これを利用することでユーザーは匿名化されたトランザクションを生成し検証することができます。しかし、このパブリックパラメータが悪用されるとZcashを偽造することができてしまうため、開発者は偽造対策のための工夫を行なっていますが(詳細はこちら)、依然として偽造のリスクは残されています。

Sapling turnstileでは、ユーザーはSproutのz-addressで保持している資金をいったんt-addressに送信してから、Saplingのz-addressに送信することでSaplingアドレスへの移行を行うことができます。
SproutアドレスとSaplingアドレスの間でZcashを直接送信することはできず、必ず一度残高が公開されるt-addressを経由する必要があります。

その際、肝心の匿名性が失われることを避けるために、移行に使ったt-addressの破棄や、残高を複数回に分割するなどの対策が推奨されています。詳細はこちらをご覧ください。

この移行方法では、t-addressからSproutのz-addressにZECを送り返すことが可能であり、現在のところSproutアドレスも引き続き利用可能ではありますが、全てのZcashをSaplingアドレスに移行することが推奨されています。

さいごに

本記事では、ZcashメジャーアップデートSaplingのSapling Addresses と Turnstile Migrationについて解説いたしました。

Zcash公式ブログではSaplingの詳細情報が掲載されていますのでぜひご確認ください。

 

参考URL:https://z.cash/upgrade/sapling/https://z.cash/blog/sapling/、https://z.cash/blog/sapling-addresses-turnstile-migration/、https://z.cash/blog/whats-new-in-sapling/

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