BitcoinABCのチェックポイント実装に関する経緯と批評について
2018.12.06
BCHNews編集部
こんにちは、BCHNews編集部のreiです。
11月20日、Bitcoin ABCのv0.18.5がリリースされました。
Bitcoin ABC 0.18.5 has been released!
This release adds deep reorg protection to ensure that transactions are immutable after 10 confirmations. This safeguard helps users, businesses, and exchanges stay secure and free from disruption. https://t.co/wubd7LQYIz
— Bitcoin ABC (@Bitcoin_ABC) November 21, 2018
このv0.18.5で”アップグレード”として新たに追加された機能は、10回の検証が行われたトランザクションは不変なものとして扱われる、というものです。
この”チェックポイント”の追加は、発表時から衝撃をもって迎えられていました。
そこで本日は、このチェックポイント追加の経緯と、それに対する界隈の反応に関してまとめようと思います。
チェックポイント追加の経緯
まず、なぜこの10回検証のチェックポイントが設けられたかですが、Bitcoin ABCのアナウンスには以下のように記載されています。
You may have read on different media there are a few miners that continue to threaten the BCH network with chain reorganizations. Many see this as a threat to the fundamental functionality of the chain and its use as peer to peer cash.
…(中略)…
This protection keeps deep reorganizations from negatively impacting you or your business.[意訳]
違うメディアで何度か読んだことがあるかもしれませんが、BCHネットワークをチェーンの再構築で脅かし続ける何人かのマイナーが存在します。多くの人々は、これをチェーンの基本的な機能とP2Pキャッシュとしての使用に対する脅威として捉えています。
…(中略)…
この保護(チェックポイント)は、深い再構築があなたやあなたのビジネスに悪影響を及ぼさないようにします。引用元URL:https://www.bitcoinabc.org/2018-11-20-bitcoin-abc-0-18-5/
この機能は、一部ではBitcoin ABC(ABC)の競合相手であるBitcoin SV(BSV)側からの攻撃(re-org attack)に対する防衛として追加されたのではないかと言われています。
re-org、とはReorganizationのことでつまりチェーンの再構築のことを指します。
チェーンの再構築には様々ありますが、代替となる長いチェーンと主たるチェーンをすげ替える攻撃や、ブロックの伝搬速度が遅いだけでもブロックの書き換えが起こります。
前者の攻撃によって、アルトコインのモナコインは過去に巨額の損失を生み出しています。
しかし、実際のところBSV側からの攻撃はありませんでした。
むしろ、BSV側で2回のブロック書き換えが起こったため、BSVに対してre-org attackが行われたという疑いさえ出ていました。
(これは、ブロックサイズが巨大化したことで、ブロックの伝搬が遅延したためであると発表されています。)
チェックポイント実装への批判
このABC側のチェックポイント実装は、10ブロック経ったら巻き戻しできませんよというものです。
したがって、reorg攻撃に対しての財産の保証にもなるはずなのですが、世間はこの対応に批判的です。
例えば、こちらのツイート。
ABC officially abandons proof of work. Devs decide the correct chain. Also it's now easy to forcibly hard fork the network by causing a 10-deep reorg. Next up, Bitcoin ABCD! https://t.co/GiEv4ZzCrV
— Bob McElrath (@BobMcElrath) November 21, 2018
ABCはPoWを捨てた。開発者が正しいチェーンを決定し、ハードフォークも簡単、次はBitcoinABCDにでもなるんですか?という厳しい批判です。
他にも、以下のような批判もあります。
This is an ill thought out change executed in an incredibly rushed and reckless manner with almost zero chance it was properly tested. The fact that a new consensus rule can be introduced in such a unilateral manner by a single developer is alarming. What is more alarming is that one developer can throw out the entire foundation of Bitcoin security without opposition.
[意訳]
これは、信じられないほど急いで無謀に実行された杜撰な変更で、適切にテストされた可能性がほとんどゼロです。単一の開発者によって新しいコンセンサスルールがこのように一方的に導入できる、という事実は驚くべきことです。さらに驚くべきは、一人の開発者が反対なしにBitcoinセキュリティーの基盤全てを投げ捨てることができることです。引用元URL:https://medium.com/@shadders333/when-bitcoin-ceases-to-be-bitcoin-the-2nd-death-893f6cceb9e0
批判の理由
なぜ、今回のチェックポイント実装はこれほど強く批判されているのでしょうか?
これは、今回のABCの実装でより多くのPoWを持つチェーンがチェックポイントと競合した場合に、最長チェーンではなくチェックポイントを優先するためです。
これは、ABCは最長のPoWが採用されるはずのBitcoinのモデルに従っていないことを意味します。
したがって、最長のチェーンを無視し、許可されたマイニングに従事するためにはABCの中央集権的な意思決定を必要とする攻撃であるという批判もあります。
また、攻撃者がABCチェーンの50%以上の処理能力を有していた場合、チェックポイントから10ブロックの正当なブロックを再編成し、ネットワークが10番目のブロックを見つけた時に、再編成された10ブロックが提出され・チェックポイントと見なされると、その時点でチェーンの分割が発生する可能性があります。
これは、最長のチェーンを優先する元のモデルでは計算量の関係で実行できなかった二重支払い攻撃が、10ブロックというチェックポイントを設けてしまったことで、比較的容易に達成できるようになったと見ることができます。
見積もりによると、攻撃者は小売の暗号通貨マイナーを使用してわずか27,000ドルでABCを効果的にコントロールすることができるそうです。
さらに、元々のモデルでは、ネットワークから離脱したノードがネットワークに復帰した時、ノードが採用するのは最も長いPoWのチェーンです。
しかし、ABCの実装では悪意のあるブロックを最初にノードが認識してしまい、そのノードではその後に受信した正しいチェーンを不正としてしまいます。
その後、このノードは攻撃者によって二重支払い攻撃に利用される可能性もあります。
そのため、ノードは24時間365日オンラインである必要があります。
つまり、このチェックポイント追加は、次のようなトレードオフになっています。
- メリット
- チェーンへの攻撃報酬を減らす
- 商人や取引所に対して10件以上の検証を保証
- デメリット
- マイナーのネットワークに対する攻撃力を高める
- メインチェーンへ接続するノードに対して新しい攻撃ベクトルを導入
参考URL:https://blog.bitmex.com/bitcoin-cash-abcs-rolling-10-block-checkpoints/、https://thenextweb.com/hardfork/2018/11/21/bitcoin-cash-abc-vulnerability/、https://medium.com/@shadders333/when-bitcoin-ceases-to-be-bitcoin-the-2nd-death-893f6cceb9e0
一言
本日は、Bitcoin ABCクライアントへのチェックポイント実装に関して批判的な意見を中心にまとめました。
ABCに関しては、ハードフォークをしてからこれまで、独断専行な部分が目立ってきており、特にその部分が強く批判されている印象ですね。
チェックポイント実装は、ノードに実装されるということもありABCチェーンの中央集権化へ懸念の声が上がっています。
これは、分散された資産として提案された”Bitcoin”のモデルに反しており、結果としてライバルであるBitcoin SV派への支持へ繋がっていくと思われ、なんとも皮肉な流れですね。
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